現代都市の経験――「浮遊」と「彷徨」の文学論

本堂 明
夢ナキ季節ノ歌


2011年11月刊
四六判上製342頁
定価 2500円+税
ISBN978-4-87714-417-3


●目次
●書評
●関連書



沌と不安の支配する現代都市における解体的な精神状況を、憂鬱や浮浪感覚に焦点をあてつつ表現した佐藤春夫、逸見猶吉、小熊秀雄などの作品の中に読み解くとともに、思想家・藤田省三の批評精神を追尋する。昏迷と不安の深まる時代、批評精神のあり方を問う精神の社会学の誕生。



〈著者略歴〉

本堂 明(ほんどう・あきら)

1948年生まれ。法政大学法学部卒業。
専攻:日本近代思想史(知覚と文学の表現形式の思想史)
著書等:『サラリーマン読書人の経験――この苦しい20世紀的世界をしのぐ』(同時代社、1992年)
藤田省三「『野ざらし紀行』についての覚書」(講義ノート復元)『藤田省三著作集5 精神史的考察』(みすず書房、1997年)
「藤田省三著作目録」『藤田省三著作集8 戦後精神の経験Ⅱ』(みすず書房、1998年)
「語る藤田省三――ある研究会の記録から」『世界』3月~9月号(全7回)(岩波書店、2003年)
『藤田省三対話集成』第一巻~第三巻 注作成(みすず書房、2006~2007年)

(本書刊行時点)





◆『夢ナキ季節ノ歌』 目次◆

はじめに

第一部 彷徨の文学――近代日本における「浮遊」の諸相

初期佐藤春夫・その側面――「放心」と「蛮気」の構造について
夢ナキ季節ノ歌――逸見猶吉「ある日無音をわびて」をめぐって
小熊秀雄・その断面――解体期における健康さへの意志
希望の微光は過ぎ去りしものの中に――小熊秀雄『焼かれた魚』について

第二部 都市の経験――「浮遊」の構造的基点

「銀ブラ」発生前史――都市における仮象性とモンタージュの精神
現代都市への転換――「銀ブラ」発生後史・浮浪文化の全面展開と公的世界の消滅
仮象性と虚無感覚

補考 「浮遊」の現在形

彷徨の形姿――映画『霧の中の風景』は東欧革命を予言していたか・西井一夫氏の映画批評への批評
女の「孤独」、かくも深く――アニータ・ブルックナー『英国の友人』
一億総日雇い化の時代――ロナルド・ドーア『働くということ』
一人ぼっちでいることの力――エゴン・マチーセン『あおい目のこねこ』

第三部 藤田省三考――精神の野党性とは何か

少数派の精神形式とは何か――藤田省三の声の方位について
全体主義と時――藤田省三断章
その精神の姿勢――理解の前提ために
「感覚」の人・藤田省三

あとがき
初出一覧









書 評

  (準備中)








◆関連書◆

 『プロレタリア文学の経験を読む――浮浪ニヒリズムの時代とその精神史』 武藤武美 著

 『藤田省三小論集 戦後精神の経験Ⅰ 1954-1975』 飯田泰三・宮村治雄 編

 『藤田省三小論集 戦後精神の経験Ⅱ 1975-1995』 飯田泰三・宮村治雄 編

 『中野重治研究 第一輯』 中野重治の会 編