書 評                                    

高橋哲哉
『〈物語〉の廃墟から
――高橋哲哉対話・時評集1995-2004』 
 


◆『ふぇみん』2004年5月15日

 戦争・戦後責任、歴史修正主義、薬害エイズ、憲法・教育基本法など、95年から最近までの思想潮流についての対話集。登場するのは、大越愛子、ノーマ・フィールド、三宅晶子さんら、社会に向かって発言し行動する人たちだ。

 「慰安婦」問題が、なぜ私たちには長い間「見えなかった」のか。主体の問題として問うことの重要性が提起されているが、それは自らを裁けない日本という国家の体質を問い続ける高橋さんの主要な視点でもある。
 あとがきで「この8年足らずの時間が日本にとって『戦後』を必死になって無きものにし、『戦前』『戦中』に向かうプロセスにほかならなかったのではないか」と憂慮する高橋さんだが、イラク人質問題での「自己責任論」や「非国民発言」からわかるように、その集大成は刻々と迫っているのかもしれない。日の丸・君が代に続き「心のノート」も強要されつつあるという。こうして日々、マスコミが、政治が、教育がヘンになっていく中で、あきらめそうになるが、川田龍平さんの「(天皇制は)僕は、変えようと思えば必ず変えられると思うんです」の言葉に、あきらめないことの大切さを教えられた。





 ◆『出版ニュース』2004年7月

 〈この八年足らずの時間が日本にとって〉〈「戦後」を必死になって無きものとし、新たな「戦前」「戦中」に向かうプロセスにほかならなかったのではないか〉〈微かな希望をたぐり寄せるために、「物語」の廃墟からグラウンド・ゼロから、もう一度始めなければならない〉戦争・戦後責任、日本軍「慰安婦」、歴史修正主義、薬害エイズ、靖国、有事法制、「9・11」、憲法、教育基本法改悪など、90年代半ばから現在に至る流れの中で浮上してきた問題をテーマ別に、高橋哲哉が8人の論者(高橋順一、岩崎稔、大越愛子、川田龍平、鵜飼哲、ノーマ・フィールド、水島朝穂、三宅晶子)と語る。時代状況を問い、根源をつかみ、現実を変える言葉の力が伝わってくる。