書 評


星野芳郎
『戦争と青春――「きけわだつみのこえ」の悲劇とは何か
 


◆『出版ニュース』2006年9月中旬号

 「きけわだつみのこえ」とは戦没学生が死を前に書いた手記を集めたもので、いずれの文章も素直でやさしいゆえに人々の哀しみを誘い、感動もさせた。
 ところが、科学技術評論家として多くの著作をもつ著者は、この「きけわだつみのこえ」を一面では感動しつつも、本当は批判的に読み解くべきではないかと言っている。その理由は、彼らの多くは〈体は大きくても心は少年のレベルを超えていなかった。そしてただ従順に、運命の死を受け入れたにすぎない。そして、こんな不幸は自分だけでたくさんだと死んでいった。思想的に苦しむことも出来ずに学友は死んだ〉わけで、これが「きけわだつみのこえ」の本質であったというのが著者の主張である。当時、理系学生であったため学徒出陣が一年遅れた著者だからこその批判だろうが、後半に添えられた著者自身のその一年間の戦時下の日記を読むと、著者の批判的な指摘がよくわかる。