書 評

宮岸泰治 著 『転向とドラマトゥルギー ――1930年代の劇作家たち
 

◆『東京新聞』2003年7月20日
 
 国家による思想弾圧、言論統制が厳しくなる1930年代、プロレタリア芸術ともコミットした新劇が、いかなる成果を上げ、またどのような課題を残したのかを考察する。村山知義、久保栄、三好十郎ら、10人の劇作家の代表作を丁寧に分析し、彼らの作劇法に対する意識の薄さを、日本の近代演劇が共通して抱える問題と見る。また転向問題が劇的な緊張を戯曲に与えたことも論証している。